2011/05/20

Sitar(シタール)について ブリッジ編


ブリッジはボディと共に音や音色に大きく影響する。
弦をブリッジの面に乗せ
そのさわり加減で音色を作る。

三味線の低音弦では棹の上部で同じ考え方の構造で音色を作っているが
日本で「さわり」と呼んでいるこの構造と音色を
インドで「ジュワリ」と呼びの「さわり」の語源と言われている。

インドでも構造だけでなく音色的な意味も持っている。

ジュワリの調整は楽器の制作と共にシタール職人の技の見せ所となる。
削り方次第で音色を自在に変えることが出来る。

倍音を多く含む調整をオープンジュワリと呼び
倍音を抑えた調整をクローズジュワリと呼んでいる。

それは演奏家の好みに合わせて職人が調整するが
例えば前者を好むPandit Ravi Shankar
後者を好むUstad Vilayat Khan
と言った具合にジュワリの調整加減が演奏家の個性にもつながっている。

弾き方や弾いている絶対時間にもよるが
ジュワリ(音色)は長持ちしない。
倍音成分が変化しながら最終的には高域がうるさくなりジュワリは終わる。

そしてまた削り直してジュワリを調整しなくてはならない。





ブリッジには以前は鹿の角を使っていたが
インドで鹿の狩猟が禁止されたため
現在はグラスファイバーやプラスティックなどを使っている。
また黒檀などの木製のブリッジもある。

博物館などに陳列されている楽器で
象牙や白檀を使った昔の楽器を見たことがあるが
音色は今となっては未知だ。



鹿の角に比べて新素材は個体差ばらつきはないが
それぞれの個性は感じられない。
そのかわり調整したジュワリが長く維持される。

鹿の角の場合その個体差は激しく逆にやっかいでもある。

もうすでに鹿の角は無くなっているので今では選ぶことが出来ない。

ただ本当によく鳴る鹿の角の音色は代え難く
是非とも奈良の鹿園の勢子による鹿の角切りをインドへ伝えて欲しいと思う。




鹿の角を支える足の部分は木を貼り付け削りだして作られる。
材質は楽器用の材木の端材が使われている。
サイズさえ合えば廃材も使われる。

材質・形状なども音に影響するができるだけ完全乾燥している材料が好ましい。

いろいろ試してみたが材として売られている60%ほどの乾燥の木材では
音の抜けが困難だった。

ブリッジもボディ同様音が抜けるまで時間を要する。

あくまで音色は弾き手の好みで変えれば良いので
試せることは試してみることだ。


ブリッジを削っていくと部材はどんどん薄くなっていき
ブリッジ本体が軽くなりすぎるので以前は5ルピー玉を貼り付けてしのいだ。
しかし経済発展と共に最近の5ルピー玉はその価値に比例して小さく軽くなってしまっている。