2016/12/01

アーカイブス



暫くの休養を余儀なくされたので、今までずっと気になっていながら、手をつけられなかった作業を進めることにしました。

今まで北インド音楽を勉強してきた過程で受け継いできた楽曲の数々。

私が勉強しているマイハール流派の楽曲の他に、歴史的音楽家が作曲した楽曲に興味を持ち収集保存してきました。

北インド音楽はあくまで即興音楽で、即興のベースは師から伝えられたメロディー・即興のプロセス・数学的アプローチなどを基に表現していきますが、歴史的音楽家達が遺したものもヒントにしようと考える人にとっては、必要不可欠なデータだと思います。


マイハール流派の始祖 Ustad Allauddin Khan が弟子入りした、セニア・ビーンカール流派の Ustad Mohammad Wajir Khan に脈々と続いてきた楽聖 Miyan Tansen の血脈は、その息子 Ustad Mohammad Sagir Khan 、そしてその息子の Ustad Mohammad Dabir Khan を最後に途絶えました。

Ustad Mohammad Wajir Khan は自分よりも早く若くして亡くなった Ustad Mohammad Sagir Khan の死によって、弟子であった Ustad Allauddin Khan に自らの音楽の全てを伝えたと言われています。

後に Ustad Mohammad Dabir Khan には Ustad Allauddin Khan の息子の Ustad Ali Akbar Khan がその音楽を伝えられました。

マイハール流派のマイハールスクールは多くの傑出した音楽家を生み、その中の Pandit Ajay Sinha Ray に伝えられた音楽を、直弟子であるDwijendra Mohan Banerjee氏とその息子 Sasanka Banerjee氏から私は受け継いでいます。

勉強したマイハール流派の伝統と共に伝えられた、ルーツであるセニア・ビーンカール流派の、Ustad Mohammad Wajir Khan 、 Ustad Mohammad Sagir Khan 、Ustad Mohammad Dabir Khan 三代や、多くの音楽家達のラーグの楽曲(バンデッシュ)の他、様々な歴史的楽曲を、私は今後生徒に伝えきれないのでデータベースとしてアーカイブすることにしましました。

これらのドゥルパドのバンデッシュの他に、 19世紀から20世紀にかけて活躍したサロード奏者 Ustad Kaukab Khan の興味深いバンデッシュがあり、それらも併せてデータベースにアーカイブします。

Ustad Kaukab Khan は大公 Wajit Ali Shah の宮廷楽士として仕えた Ustad Na'matullah Khan の次男で、彼の創作として Raag Kaukab Bilawal も遺されています。

彼が遺したエピソードで興味深いのは、1908年に彼が行なったヨーロッパツアーの最中にサロードが壊れてしまい、彼はパリでバンジョーを手に入れて改造、フィンガーボードにサロードのようなメタルプレートを張り付け演奏し、ツアーを続けたというエピソード。

後にインドへ帰国しそのバンジョーでレコーディングをしているという記述も残っていますが、残念ながらその音源は現在アーカイブリリースされていません。


今後準備が出来次第データベースを立ち上げていきます。

ベンガル語で読める方にはそのまま使えるデータですが、現在のベンガル語表記から英字表記に変えたり、五線譜への移行なども時間の許す限り対応していく予定です。

また原譜のノートに手書きコピーされた際の書き間違えや、ヒンディー語からベンガルへ語への訳の際の間違いなどもあるので、作業に時間がかかるものもあります。

これらは膨大な量のデータなので、英字表記への訳などご協力いただける方が居られましたら、是非ともご協力よろしくお願いいたします。


画像は Ustad Kaukab Khan ノートの最初のページ、Raag Puriya と Raag Yaman。